相続税の申告及び納税には期限が定められており、遺産分割がまとまらなくても、それを理由に期限を延長することはできません。
また、遺産分割協議により取得者が決まっていなければ、相続税の軽減の特例や納税の特例を適用することはできません。
☆相続税の申告・納付期限
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
また、申告期限=納付期限ですので、相続税の納付も期限内にしなければなりません。災害その他やむを得ない事情があり、期限内に申告及び納税ができない場合で、税務署長が許可したときは、その期限を延長することが出来ますが、「遺産分割協議が調わない」という理由は、災害その他やむを得ない事情に該当せず、申告期限は延長できません。
従って、遺産分割協議が調っていなくても、期限内に相続税の申告書の提出及び相続税の納税を行わなければなりません。
この場合、各相続人が法定相続分で財産を相続したものとして、相続税の申告及び納税を行うこととなります。
相続税法においては、税の軽減の特例や納税の特例がいくつか設けられていますが、いずれの特例も遺産分割協議においてその取得者が決まっていない場合には、適用を受けることが出来ません。
☆主な特例
- 配偶者の税額の軽減・・・被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは相続税がかからないという制度。
1)1億6千万円
2)配偶者の法定相続分相当額
2.小規模宅地の評価減・・・被相続人の事業用及び居住用の宅地等を、一定の要件を満たした相続人が相続した場合、一定の面積を限度としてその宅地等の評価額が50%または80%減額される制度。
遺産分割協議が調わない場合、ひとまず、法定相続分で申告・納税を行い、分割協議成立後、再度修正申告もしくは、更正の請求を行うこととなります。
遺産分割協議に法的な期限はありませんが、相続税が課税される可能性のある場合は、10か月という期限を意識して手続きを進められることをお勧めいたします。
また、将来の相続時に遺産分割協議が調わないと予想される場合には、遺言書を作成しておくことにより、このような事態を避けることが出来ます。遺されるご家族のために、生前からできる対策を講じておくことも大切ではないでしょうか。