公正証書遺言作成のお手伝いをしておりますと、往々にして遺言者の意思が、
相続人の遺留分を侵害してしまうケースに出会います。
付言事項等で、遺留分減殺請求をしないように暗に遺言者の意思を書いたとしても、
相続人の遺留分請求権はなくすことはできません。
今回は、そんな場合に有効となる、遺留分放棄について、また、
似たような言葉の相続放棄との違いについて、お話いたします。
☆そもそも遺留分とは何でしょう。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められている、最低限度の相続分のことを指します。
そして最低限度の相続分を侵害されるような場合に、侵害している者に対して、
最低限度の相続分までの相続財産(金銭換算)を請求する権利を、遺留分減殺請求権といいます。
☆遺留分放棄とは
最低限の相続分も相続できないような場合に、これを請求する権利を放棄するということです。
したがって、遺留分の放棄をしても財産を相続することは可能です。
遺留分は被相続人の生前でも死後でも放棄することができます。
☆相続放棄との違い
相続放棄とは、法定相続人が相続人としての地位を放棄することで、
はじめから相続人ではなかったことになります。
資産も負債も一切相続しません。
また生前の相続放棄は認められず、相続開始と自分が相続人であることを知った日から
3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。
☆遺留分を放棄するための手続き(被相続人の生前・死後により異なります)
・被相続人が生存している場合
被相続人の住所地を管轄とする家庭裁判所へ遺留分権利者本人が申し立てます。
遺留分権利者が自らの意思で放棄をする必要があり、他者が強要してはなりません。
裁判所の許可を得るためには、すでに生前贈与を受けたなどの放棄の代償が行われる必要があります。
・被相続人が死亡している場合
被相続人が死亡している場合は、遺留分権利者が侵害者に対し、「遺留分を請求しません」と
意思表示をすれば足ります。
また、遺留分減殺請求は(相続開始と遺留分を侵害することを知ってから)1年以内に行わなければ、
失効しますので放棄したと同じ結果となります。
遺留分を放棄すると基本的に撤回できません。放棄する時には慎重にご検討いただきますようお願い申し上げます。